今秋こそ見にいきませんか? 中禅寺湖ヒメマス遡上。2022年は資源回復の転換点となるか?

産卵のため遡上する中禅寺湖のヒメマス おすすめスポット

【更新情報】2022年10月2日(日)に遡上そじょうのようすを見に出掛けたところ、紅く色づいた2匹のヒメマス(オス)を確認することができました。

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今回は奥日光にひと足早い秋の訪れを知らせてくれる、中禅寺湖のヒメマス遡上そじょうについて紹介したいと思います。

以前から興味があって見に行きたかったのだけれど、いったい何処にいけば見ることができるの? そこへのアクセスはどうしたらいいの? また見るにあたって何か注意事項はあるの?…etc.

いろいろと分からないことや、気になることがあって、二の足を踏んでいた方も多いかも知れません。

今回はそんな人のために

  • どんな光景が見られるのか
  • どこに行けば見られるのか
  • いつ頃見にいくのがおすすめなのか
  • 観察ポイントまでのアクセス&注意事項

といった情報をまとめてみました。

これ以外にも、もしヒメマス遡上が見られなかった場合でも、ここに行けば紅いヒメマスが見られますよ!というおすすめスポットも紹介しています。

また、ここ数年大きな問題となっているヒメマスの個体数減少(資源回復策)についての気になる情報も載せていますので、この後の内容にもぜひ目を通してみてください。

こんな光景を見ることができます(2017年の遡上のようす)

この記事をご覧いただいている方は、ヒメマスの遡上そじょうがどういったものなのか、すでにご存じの方も多いかも知れませんが、念のためこんな光景が見られますよ!という代表的な写真を紹介します。

下の写真は2017年9月27日の午後に撮影したものです。
当日は秋晴れのとてもいいお天気でした。太陽光線が水の中まで強く射し込んで、ヒメマスの紅色と梅花藻ばいかもの緑のコントラストを際立たせていました。

まさに、ずっと見ていられる光景でした!

私はこの2017年以降も毎年ヒメマスの遡上を見に現地に足を運んでいます。ですが残念なことに、2018、2019、2020、2021年と4年連続でヒメマスが激減してしまったことが原因で、その姿を見ることができていません。

今年こそはまたあの紅色と緑のコントラストを見てみたいものです。

菖蒲清水川を遡上する中禅寺湖のヒメマスたち(2017年に撮影)この年はヒメマスの遡上数が大変に多い年でした
ヒメマス(雌雄)は産卵期を迎えると婚姻色で体が紅く染まります。また雄は顔つきや体つきも大きく変化します
緑の絨毯のように見えるのは梅花藻ばいかも。冷たい清流を好む水草で、その名前の通りに初夏から初秋にかけて梅に似た白い花を水中で咲かせます。緑と紅のコントラストがとても美しいですね!
時間を忘れて見入ってしまいます
今年はこの光景を見られるといいのですが

見頃はいつ?

その年によって多少前後するのですが、中禅寺湖のヒメマス遡上が始まるのは例年9月上旬くらいからです。最初のうちは数は少ないのですが、次第に数を増していき、9月中旬~10月初旬にかけて遡上数がピークを迎えます。そのあと徐々に数が減っていき10月末には終了を迎えるというのがだいたいの流れです。

ただ上でも書いたように、遡上数が極端に少ない年があるというのも事実で、そんな年に当たってしまうと、期間中であってもまったく姿が見られないなんてことも起こります。

もちろん、そんな状況では見に行ってもしかたないので、事前に遡上の状況を把握しておきたい訳です。

そしてそんな時に見てもらいたいのが、中禅寺湖漁業協同組合が運営している公式ブログになります。

9月のヒメマス遡上シーズンになると下の画像にあるようにブログがアップされるのでこれを参考にしてみてください。ただ、2019、2020、2021年のようにヒメマスの遡上数が極端に少なかった年は、記事がアップされなかったので注意は必要です。

もし時期になってもブログの更新が無いようならば、Twitter(ツイッター)で、キーワード検索:中禅寺湖 ヒメマス 遡上そじょう で検索して情報を仕入れたほうが手っ取り早いでしょう!

どこで見ることが出来るの? 行き方は?

菖蒲清水川の河口 で見ることができます

中禅寺湖でヒメマスの産卵遡上が見られる場所はいくつかありますが、その中で最も遡上の規模が大きいのがこの菖蒲清水しょうぶしみず川の河口になります。

この川は周辺に豊富に湧き出している湧水ゆうすい菖蒲清水しょうぶしみず)と、上流にある菖蒲ヶ浜しょうぶがはま発電所(地獄じごく川の水を利用)の排水とが合流したもので、最後は中禅寺湖へと流れ出していきます(下図参照)。
ちなみに、排水といっても発電に利用しただけなので、水はとても綺麗なものですよ!

菖蒲ヶ浜周辺の地図(国土地理院の地図より)
菖蒲清水川河口周辺の拡大図(国土地理院の地図より)

前年の秋に帰ってきたヒメマス親魚しんぎょから採取された卵は、この川の水(主に菖蒲清水の湧水)を使って人工的に育てられます。その後、翌年の春に5センチほどに成長した子供たちはこの川の河口から放流されて中禅寺湖へと泳いでいきます。 放流される稚魚の数は毎年およそ百数十万匹の規模となります。

そして放流してから2~3年後の秋、湖で大きく成長したヒメマス親魚は産卵のため再びこの川に戻ってきます(この産卵のために同じ川に戻っている行動のことを「母川ぼせん回帰」といいます)。

中禅寺湖に放流されるヒメマス稚魚の大半は、この菖蒲清水川から放流されているため、帰ってくる親魚の数もこの川が一番多いということになります。

ちなみに、上の図を見ると、すぐ隣に湯川ゆかわ(地獄川)の河口がありますが、菖蒲清水川から放流された個体(菖蒲清水の水で育った個体)は湯川にはほとんど遡上することはないそうです(迷子になった個体が僅かに遡上する程度)。それだけ母川回帰ぼせんかいき性が強いということなんですね。なんて賢い魚なんでしょう!

最寄りの駐車場(竜頭滝下駐車場)からのアクセス

では次に、この菖蒲清水しょうぶしみず川のヒメマス観察ポイントまでどうやって行けばいいのか画像を交えて詳しく説明していきます。

観察ポイントに最も近い駐車場に『竜頭りゅうず滝下駐車場(無料)』というところがありますので、そこを起点とした歩きのルートを以下に示します。

歩きといっても、せいぜい5分くらいですのでそんなに心配しなくても大丈夫ですよ!

ヒメマスの遡上の時期は秋の行楽シーズンと重なります。紅葉狩りを楽しみに来た観光客のほか、キャンプ場の利用者も多くなるため、駐車場を確保するのが非常に難しくなります。もし可能ならば、平日の午前中の早い時間(8時-10時)や午後(14時-16時)の時間帯に行けば多少は利用しやすいかも知れません。

最寄りの無料駐車場(竜頭滝下駐車場)からヒメマスの観察ポイントまでのルート(道のりはおよそ400メートル。徒歩5分) 画像出典:Google Earth より
竜頭滝下駐車場(無料の県営駐車場) 画像出典:Google Earth より
竜頭滝下駐車場から道に沿って南に100mほど歩くと、『菖蒲ヶ浜キャンプ場入口』の看板が出てくるので、そこにある横断歩道を渡ってください。 画像出典:Google Earth より
横断歩道を渡ったら、目の前にある林道を道なりに進んでいきます。すぐに湖畔に出られます
途中に中禅寺湖漁業協同組合の事務所があります。⇦キャンプ場と書いてある方に進んでください
湖畔にでるとこんな感じです。奥に見えるのが菖蒲ヶ浜の遊覧船のりば
湖畔のすぐ手前に駐車場がありますが、これは菖蒲ヶ浜キャンプ場の利用者専用の駐車場になります。一般の方は利用できないのでご注意を!
湖畔にでたら右へと進みます
ルールをきちんと守りましょう!
すぐに菖蒲清水しょうぶしみず川の河口が見えてきます
ここが菖蒲清水川の河口秋になるとここを目指して沢山のヒメマスたちが帰ってきます
この川には橋がかかっており、橋の向こう側は菖蒲ヶ浜キャンプ場の敷地になります。奥の建物はキャンプ場の事務所受付け
橋から向こう側は、キャンプ場の利用者しか立ち入りが許されていません。くれぐれもご注意を!
橋の上流側はこんなかんじ。さらに上流にいくと遡上したきたヒメマスを捕らえるための施設があります。

今回紹介するヒメマスの観察ポイントのすぐ隣には、菖蒲ヶ浜しょうぶがはまキャンプ場という有料のキャンプ施設があります。施設の利用者以外の立ち入りが禁止されているエリアや利用者しか使うことのできない駐車場がありますので十分に注意してください。

もし見られなかったら『さかなと森の観察園』に行ってみよう!

さかなと森の観察園 看板

先にも書いたように、中禅寺湖のヒメマス遡上は2018年以降ずっと低迷を続けています。
きっと今年こそは回復するだろうと大いに期待はしているのですが、結果はフタを開けてみないと分かりません。

万が一、今年も見られなかったとなってしまった場合は、すぐお隣にある施設『さかなと森の観察園』に出掛けてみてください。

先ほど紹介した竜頭滝下駐車場から車で1分もかかりませんし、入園料は大人300円、小人100円(小・中学生)と格安です!

中禅寺湖で育った天然モノというわけにはいきませんが、紅く色づいた大きなヒメマスの姿を見ることができますよ!

下の2枚の写真は『さかなと森の観察園』で展示飼育されているヒメマスの姿です。体色が銀色の方(性別は不明)は2021年7月中旬に撮影したもので、もう一方の体色の紅い個体(どちらも雄)は翌月の8月初旬に撮影したもの。
たった半月しか経っていないのですが、カラダの色と形が大きくさま変わりしている様子が見てとれます。まさに生命の神秘ですね!

展示の内容が変わってしまうことも考えられます。出掛ける前に電話などで確認することをおすすめします。

展示水槽で飼育されているヒメマス(2021年7月中旬に撮影)
展示水槽で飼育されているヒメマス(2021年8月初旬に撮影)。たった半月ほどで、カラダの色と形が大きく様変わりしている様子が見てとれます。

『さかなと森の観察園』についてもっと知りたいという方は、以下の記事もご覧ください!

さかなと森の観察園|中禅寺湖への外来鱒移植の歴史はここから始まった
【新着情報】2023年3月20日(月)から今期の営業を開始したそうです。 ****************************** 今回は中禅寺湖のほとりにある『さかなと森の観察園』について紹介させていただきます。 この施設は明治23年...

ヒメマスの減少に歯止めはかかるのか?(2022年は重要な年)

ところで、中禅寺湖のヒメマスはなぜここまで激減してしまったのでしょうか?その理由はいつくか挙げられていますが、なかでも「レイクトラウト」による食害の影響が大きいのではないかと、国と県、漁協は考えているようです。

ここで、レイクトラウトとは北米原産のサケ科の魚で、中禅寺湖には1966年にカナダから初めて持ち込まれました。魚食性がとても強い魚で、湖内にいるワカサギやヒメマスなどを捕食。大きいものになると体長1メートル以上にも成長するため、釣り人たちのあいだでは大変人気のある魚です。

74センチのレイクトラウト。日本では中禅寺湖にしか生息していません。

中禅寺湖では東日本大震災による放射能汚染の影響で、2012年から釣った魚を持ち帰ることが原則禁止されており、キャッチ&リリースする決まりとなっています。※ 2017年4月にヒメマスの持ち帰り禁止は解除されました(放射性物質濃度が基準値を下回ったため)。

2012年以前は、釣りなどによってレイクトラウトは間引まびかれ、増えすぎるのが抑えられたため、レイクトラウトとヒメマスの共存関係がある程度成り立っていた。

ところが魚の持ち帰りが禁止されたことで、この関係が崩壊。増えすぎてしまったレイクトラウトの食害により、ヒメマスが激減してしまったのではないかと考えているようです。

そこで国と県、漁協では、以前のようなレイクトラウトとヒメマスが共存できる環境を取り戻そうと、いろいろな調査と対策を数年にわたって実施してきました。

そしてその対策のひとつの結果が、2022年の秋に出るそうなのです。

その共存できる環境作りを目指して、調査チームが行った実験の結果がことしの秋に出ます。ポイントは「放流」です。これまでは体長5cmほどに育った稚魚を放していましたが、大きくすれば食べられにくいのではと考えて、一部を通常の倍の10cm程度にまで育てて放すようにしています。もしレイクトラウトが原因であれば、この方法で生き残れるヒメマスが増えるのではと考えています。ことしの秋にその第一世代が遡上の時期を迎えるため、関係者はその数に注目しています。

NHKジャーナル 中禅寺湖のヒメマスを救え!(2022.6.21放送) より引用
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/LVqkjVBfKL.html

2022年は今後のヒメマスの命運を占う意味で大変重要な年になりそうです。良い結果が出ることを祈りたいですね。

観察ポイントに関する基本情報

  • 名称
    中禅寺湖 菖蒲ヶ浜しょうぶがはま 菖蒲清水しょうぶしみず 河口  ※ この川は人口の河川になります
  • 場所
    〒321-1661 栃木県日光市中宮祠ちゅうぐうじ2485 菖蒲ヶ浜しょうぶがはまキャンプ場 そば
  • 電話
    なし
  • ウェブサイト
    なし
  • ヒメマスの遡上そじょうシーズン
    毎年 9月~10月 ※遡上数は年によって大きく増減します
  • 料金
    なし
  • 駐車場
    遡上ヒメマスの観察ポイントから徒歩5分(道のりで400メートル)のところに竜頭滝下駐車場(無料)があります。
  • 注意事項
    今回紹介する遡上そじょうヒメマスの観察ポイントのすぐ隣には、菖蒲ヶ浜キャンプ場という有料のキャンプ場施設があります。施設の利用者以外の立ち入りが禁止されているエリアや、利用者しか使うことのできない駐車場がありますので十分に注意してください。

まとめ

今回は秋に始まる中禅寺湖のヒメマス遡上について紹介しました。
遡上のようすを観察できる場所のほか、そこまでのアクセス&注意点などもまとめました。
あとは実際に遡上が始まったという情報が入りしだい、現地に足を運ぶだけです!
日本広しといえども、あんなに美しいヒメマス遡上のようすを間近に楽しめる場所はほとんどありません。いちどその様子を目にしたら感動すること間違いなしです。まだ見ていないという方はぜひ足を運んでみてください。

ヒメマスのお父さんお母さん、今年こそはたくさん帰ってきておくれ!

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