中禅寺湖の畔にある日本両棲類研究所ってどんなところ?

日本両棲類研究所の外観 おすすめスポット

栃木県の北西部に広がる日光国立公園、日本一標高の高い場所にあるみずうみ中禅寺湖。

そんな中禅寺湖の北岸に建つ<日本両棲類りょうせいるい研究所>はちょっと変わった水族館である。

建物の赤い三角屋根がとても印象的な施設で、中禅寺湖に訪れた人なら誰でも一度は目にしたことがあるはず。けれど何の施設なのかその中身を知る人は意外に少ないのではないだろうか。

施設は昭和45年(1970)に初代所長である篠崎尚次しのざきなおつぐ氏によって設立された両生類りょうせいるいを集めた私立研究所。その後、1995年に惜しまれながら一度は閉館したものの、2019年8月にリニューアルオープン。篠崎さんの次男である篠崎尚史しのざきなおしさんが後を引き継いだかたちだ。

館内ではおもにサンショウウオ、イモリ、カエルが展示されており、日本だけでなく世界に生息する両生類も観察可能だ。

施設内容

入ってすぐにある大型ディスプレイからは、この施設が行っている取り組みについての解説映像が流れています

施設は木造2階建。1階は各種両棲類の展示のほか、ぬいぐるみや専門書などを扱う売店がある。2階には動物と触れあいながらスイーツや軽食を楽しめるカフェも併設されている。

館内の見どころ

1階に展示されている愛嬌たっぷりのクランウェルツノガエル

館内に展示されている見どころのいくつかを紹介する。
見どころは他にもたくさんあります。

その① 世界最大級の両生類を間近に観察できる

国の特別天然記念物 オオサンショウウオ(大山椒魚) 地方名 ”ハンザキ” ともいう

見どころその①は、国の特別天然記念物であるオオサンショウウオ。体長71cm、体重3.5kgにもおよぶ大きな個体で、施設のリニューアルオープンにあわせて広島市安佐あさ動物公園から譲り受けた8歳になる♀(メス)の個体だ。

県内でオオサンショウウオが見られる施設は、ココと大田原おおたわら市にある<なかがわ水遊園>くらい。絶滅の危険が増大している種であるとして、環境省のレッドリスト:絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に分類されているたいへん貴重な動物である。

まるでどら焼きのように平たくて大きな頭には、小さいつぶらな瞳がすこし離れて配置されており、ゆるキャラ感満載。生理的にほかの両棲類はダメだけど、オオサンショウウオなら大丈夫だという女子が多いのも頷ける。

夜行性のためなかなか動いくれなかったが、10分ほど様子をみていたら水面まで浮上して息継ぎする姿をみせてくれた。短い足でのっそりと動く姿は実に可愛いかった。

世界最大の両生類である、チュウゴクオオサンショウウオもこの施設で飼育展示されていたが、今年2021年6月に残念ながら虹の橋を渡ったそうである(享年74歳)。施設のリニューアルオープンにともない、25年振りに岡山県から里帰りをはたしたことで大きなニュースにもなったので覚えている人もいるだろう。

日本最大・最長寿(体長約1.4m、体重約35kg、推定年齢74歳のメス。愛称はトラちゃん)の個体だったということで、一度この目で見たかったのだが、とても残念でならない。

チュウゴクオオサンショウウオと篠崎尚史氏

25年ぶりに里帰りしたチュウゴクオオサンショウウオと所長の篠崎尚史さん ~ 出典:下野新聞チャンネル ~

その② あの昭和の大ブームの火つけ役はここの所長だった!

1階フロアでのもうひとつの見どころはメキシコサラマンダーだ。この呼び名でいわれても今ひとつピンと来ないかも知れないが、1980年代後半に一世を風靡ふうびしたあのウーパールーパーのことだといえば分かる人も多いだろう。

1985年にその特異な姿から、(まるで宇宙からやって来た未確認生物だ!?)日清焼そばUFOのCMキャラクターに抜擢ばってき尾崎亜美おざきあみの名曲 Wuper Dancing(ウーパー・ダンシング)にあわせて動く、あの愛らしい姿を覚えているのはきっと40代後半以上の人にちがいない。

あのウーパールーパーを世に知らしめたのがこの施設の所長だったんです!

驚いたことに、このウーパールーパーをアメリカから初めて日本に持ち込んだのが現在の所長である篠崎尚史しのざきなおしさん。 1979年当時、現地の大学で生態学・発生学を学んでいた氏が研究材料として日本に持ち込んだのが始まりなのだそうだ。まさかあのブームの火つけ役がこんな近くにいただなんて、世間は意外に狭いのかもしれない。

館内では、お馴染みのピンク色をした個体の他、野生本来の色である暗褐色あんかっしょくの個体も間近に見ることができる。生態や研究内容を記したたくさんの解説パネルも展示されているので、子供たちの勉強にもうってつけだろう。

館内にはこの他にも両生類に関するたくさんの解説パネルが用意されています

その③ 2階ではアノ動物との触れあいが待っている

1階の展示をひととおり見終え、いざ2階に上がろうしたところ、何やら笑い交じりの悲鳴のような声が上から響いてきた。

(あっ、受付けでスタッフが話してくれた例のアレだな!)とすぐに察しがついた。

このとき2階のフロアでは動物との触れあいイベントが開催されており、希望者はヘビであるボールパイソンの赤ちゃんを触ることができたのだ。このヘビは別名ボールニシキヘビとも呼ばれる小型のニシキヘビで原産地はアフリカ。ボールのように丸くなる習性があることからこの名前が付いたそうだ。

2階にあがると、小さな男の子がスタッフからボールパイソンをちょうど手渡されたタイミング。おそらく孫を連れて遊びにきたのだろう、すぐとなりでカメラを構えるお爺ちゃんとお祖母ちゃんが(ヤダー、キモチワルイ!)とかなり興奮ぎみ(笑)。なんとも微笑ましい光景だった。

私もスタッフにすすめられてボールパイソンに触らせてもらいました。特になんの匂いもないし、手がべた付くこともなし。家で飼っている猫くらいの体温を想像していたが、ゴムホースみたいにヒンヤリしていた

ちなみに、2階フロアにはコーヒー紅茶などのドリンクのほか、フレンチトーストパスタなどの軽食も楽しめるカフェが併設されている。カフェだけを利用することも可能で、その時は入館料は必要ないそうだ。

2階にあるカフェのようす。南向きの大きな窓があり、とても明るく解放感があります。
カフェのメニュー

その④ 思わず欲しくなる、カワイイ両生類グッズの数々

たくさん並べられたアカハライモリ(オス)のぬいぐるみ。色ちがいのメスもあった

最近の水族館や動物園では、展示している動物にまつわるグッズの販売にも力を入れていることは知っていた。当然、ここの研究所でもある程度はそういったことにも力をいれているだろうと思っていたのだが、まさかここまで本気に取り組んでいたとはまったくの予想外だった。しかもカワイイ系のグッズがあんなにたくさんあって、研究所というお堅いイメージとのギャップが激しすぎ(笑)

下の画像は施設で販売されているグッズの数々で、これらはそのほんの一部。その力のいれようが伝わるだろう。いい歳をした中年の私でさえも少し触手が伸びたほどだった。

なかにはここでしか買えないオリジナルの商品もあるようなので、こういったカワイイものに興味がある方はいちど足を運んでみてはいかがだろうか。
※ オリジナル商品のいくつかはフェイスブックの通販サイトでも購入可能

日本両棲類研究所で販売されているグッズの数々

  • ぬいぐるみ
  • ピンバッジ、スマホリング、キーリング、キーカバー、パスケース などの小物
  • ボールペン、メモ帳、スケッチブック、しおり、クリップ、マスキングテープ、ペンケース 文房具
  • アカハライモリの靴下、Tシャツ などの衣類
  • 両生類や爬虫類の図鑑、書籍、ポスター
  • 両生類のフィギュア、置き物、ガチャガチャ
    …etc.
ウーパールーパーのパスケース
巨大なオオサンショウウオのぬいぐるみ
両生類の図柄をあしらった、ピンバッジ、しおり、マスキングテープなどなど
カエルやイモリのポスターもたくさん
両生類や爬虫類の図鑑
精巧にできたアート作品まで

日本両棲類研究所が掲げる3つのミッション

もしかすると、ここまで記事に目を通してくれた人の中には、この日本両棲類研究所とは飼育している動物の展示可愛いグッズを販売しているだけの施設なの?と疑問をもった人がいるのではないだろうか。

もしそうだとしたら、それは私の説明不足、大きな間違いなのでここで補足説明をしたいと思います。

日本両棲類研究所とは、①自然保護活動/②種の保存/③発生学・再生学の研究といった3つの大きなミッションを掲げて日々活動を続けている施設になります。

それぞれの具体的な活動内容は以下のようなもの。

①自然保護活動(活動内容の一部を紹介)

研究所が行っている自然保護活動の内容を記したパネル(館内1階で展示)
  • クロサンショウウオの保全
    裏男体山での土石流防止のために作られた砂防ダムによって、希少なクロサンショウウオの繁殖地が土砂で埋まってしまう危険があることを知り、世界初となる人口の繁殖プールを設置
  • ハコネサンショウウオの保全
    繁殖期に華厳けごん渓谷へ移動するハコネサンショウウオが、いろは坂の道路上で車にひかれる状態を改善するため、道路下に世界初となる専用の横断トンネルを設置

②種の保存(活動内容の一部を紹介)

『 日本全国・アカハライモリお腹マップ 』のパネル 同じアカハライモリでも住んでいる地域によってお腹の模様が違ってくるそうです(館内1階で展示)
  • 絶滅危惧種、希少種、地域の重要種を保存するために、生体で繁殖させて継代している。
  • 生物学、医学の研究材料として使用する種は、野生から採取するのではなく、研究所で人口繁殖させたものを使用する

③発生学・再生学の研究(活動内容の一部を紹介)

イモリをつかった再生医療の研究結果を記した解説パネル(館内1階で展示)。パネルは他にもたくさんあります。

両生類には人にはない驚異的な再生能力が備わっていることが古くから知られている。例えばアカハライモリでは、手足だけでなく、目や心臓、脳の一部が傷ついても再生可能。この再生のメカニズムを研究して、人の役にたつ再生医療の実現にむけた活動をしているそうだ。

これら3つのミッションと、動物の展示との関係を図で表すと以下のような感じになるだろう。

動物の展示は、つまりは研究所がおこなっている活動内容の一部分だということ。

水面下にある研究という部分は、部外者にとっては理解するのがたいへん難しい領域。なかなか興味をもってもらえないというのが現実だろう。

この研究の部分をもっと分かり易く伝えること、そして多くの人たちが興味をもってくれるためのキッカケ作りの役割が、この動物の展示にはあるのだと思う。

動物の展示を通じて、若くて優秀な人材がこの分野にたくさん集まってくれることを願いたい。

施設の基本情報

  • 施設名称
    日本両棲類研究所(サラマンダーの水族館)
  • 住所
    〒321-1661 栃木県日光市中宮祠ちゅうぐうじ2484
  • 電話
    0288-25-6000
  • ウェブサイト
    「日本両棲類研究所」の公式ホームページはこちら
    「日本両棲類研究所」の公式フェイスブック・サイトはこちら
    「日本両棲類研究所」の公式インスタグラム・サイトはこちら
  • 営業時間
    10:00~16:00
    ※ 施設の看板には10:00~17:00とありますが、現在は10:00~16:00の営業のようです
  • 休館日
    火曜日
    ※ 臨時休館などもあるため、出掛ける際には事前に電話やFacebookのタイムラインなどで確認することをおすすめします
  • 入館料金
    一般
     ・大人 1,000円 ・中人 800円(中学生~高校生) ・小人 500円(4歳~小学6年生)


    団体(30名以上)
     ・上記の料金から20%OFF

    ※ 中学生、高校生は受付けの際に生徒手帳の提示が必要。手帳がない場合は大人料金となる場合も
    ※ カフェのみの利用の場合は入館料は不要。その際は受付けでスタッフに声掛けする
  • 駐車場
    敷地内に10数台駐車可

まとめ

今回は中禅寺湖の畔にある日本両棲類研究所(サラマンダーの水族館)について紹介しました。
館内では、国内外の両生類(カエルやイモリ、サンショウウオなど)が多数展示されており、それらが元気に動き回る姿を間近に楽しむことができます。
国の特別天然記念物であるオオサンショウウオや、ある年齢以上の人にとってはとても懐かしいあのウーパールーパーも展示、ボールパイソンを直接手で触れられる大興奮のイベントも開催されており見どころは満載!
この他にも、両生類のもつ驚きの再生能力や、それを利用した再生医療の研究についても学ぶことができるため、今まで知らなかった両生類の魅力をきっと再発見できるにちがいない。
研究所なんていうと、とてもお堅くとっつき難いイメージがあるかも知れないが、決してそんなことはない。子供から大人までが楽しめる魅力的な展示が多数あるので是非ともいちど足を運んでみてもらいたい施設だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました